囲碁にまつわる言葉(つ) - 横浜市退職小学校長会

囲碁にまつわる言葉(つ)

2023/8/16
囲碁同好会事業部のアイキャッチ画像

「枕草子」その2

 

161段「故殿の御服のころ」からの一部抜粋

 

人と物言う事を碁になして、近う語らいなどしつるをば、「手ゆるしてけり」「結(けち)さしつ」など言ひ、「男は手受けむ」など言ふことを、人はえ知らず。

 

会話をするとき、碁に例えて、親しく言い交わしたなどしたのを、「手出しを許してしまった」「いよいよ深い間柄に進む」「女のほうが上手なので、男が一目置いて相手をする」などと言う。碁をよく知らない人には意味がわからないだろう。

 

この君と心得て言ふを、「何ぞ、何ぞ」と源中将は添いつきて言へど、言わねば、かの君に「いみじう、なほこれのたまへ」とうらみられて、よき仲なれば聞かせてけり。

 

宰相の中将斉信とは、互いに分かって会話しているが、源中将は、「いったい何のことだ、何のことだ」とつきまとってきて尋ねるが、言わないでいると、「ちゃんと教えてあげなさい。」と言われた。お二人は仲良しなので、聞かせてしまった。

 

あへなく近くなりぬるをば、「おしこぼちのほどぞ」など言ふ。われも知りにけりと。いつしか知られむとて、「碁盤はべりや。まろと碁打たむとなむ思ふ。『手』はいかが『ゆるし』たまはむとする。頭中将と『ひとし碁』なり。なおぼしわきそ」と言ふに、

「さのみあらば、『定め』なくや」言らへしを、

 

あっけなく親しくなってしまったのを、「石を崩すあたりまで行っている。」と言う。源中将は、自分も分かってしまったのだと、早く知られたいものだと、『碁盤はありますか。わたしと碁を打ちましょう。わたしにも手を許してください。わたしは頭中将と同等なのです。どうか、分け隔てをなさらないで』と言う。

「そんなことをしていたら、わたしは無節操なことになるのでは」と言うと、

 

日常会話の中で、囲碁の対局場面の様子を豊かに取り入れている。しかも、男女の仲の比喩としての意味をも持たせている。並の囲碁愛好者では叶わないことである。清少納言の囲碁の力量恐るべしというところである。紫式部と対戦させて鑑賞したいものだ。

 

枕草子絵巻 に対する画像結果

 

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