囲碁にまつわる言葉(イ)
2024/9/13
万葉集
囲碁にまつわる言葉(た)で、「碁」の文字が古事記で使われていることを紹介した。これが最古の記述ではないかとの思いがあった。ところが、どうやら最古ではないらしい。それより古い記述があるのだ。
万葉集巻二に、柿本人麻呂が、妻の死去に際して詠んだ歌がある。短歌二首(208.209)に続いて詠んだ歌(210)は、次のようである。
「うつせみと 思ひし時に 取り持ちて 我が二人見し 走り出の 堤に立てる 槻の木の こちごちの枝の 春の葉の 繁きがごとく(以下省略)」
「この世の人だと 思って居たときに、手に取り持って 二人で眺めた 走り出の 堤に立っている 槻の木の あちこちの枝の 春の葉の 茂っているように若いと」
この「こちごちの」に充てられている文字は、「己知碁知乃」である。
これは、古事記に先んじて使われた用例である。日本最古の用例であろう。人麻呂も碁を嗜んだのだろうか。どんな相手と打っていたのだろうか。