囲碁にまつわる言葉(レ)
2025/3/31

「幻庵(げんなん)」
「幻庵」は百田尚樹作の小説の題名である。
江戸時代徳川家康によって、棋院四家の家元制度が作られた。本因坊家、井上家、安井家、林家を囲碁の家元とし、幕府から扶持を与えた。そして、毎年江戸城で将軍の前で力量を競わせた。これを「御城碁(おしろご)」と呼ぶ。
四家の中で力量が最も優れた棋士は、将軍から「名人碁所(めいじんごどころ)」に任じられ、四家を束ねる絶大な権限が与えられた。
小説「幻庵」は、主人公として囲碁の才能を見込まれ井上家の内弟子となった橋本吉之助少年を登場させている。少年は、後に井上家の当主「井上因碩」となる。小説は、少年の生涯を描くとともに、名人碁所を目指す四家の競い合いや各棋士の修業の様子、その中で生きる人間模様を描いている。
小説では、実際に打たれた碁の勝負を記録した棋譜(碁譜)を多数活用している。棋譜を解説しながら、作者は、棋士の力量、戦いの推移、対局者の心理、息づかいまでをも生き生きと描き出している。
因碩対秀和戦の棋譜