囲碁にまつわる言葉(c)
2022/6/1
「手抜き」
手抜き工事、手抜き仕事、やるべき事をきちんとやらないと、案の定、悪い結果が起こること間違いなしです。それくらい、手抜きという言葉には、悪いイメージがついて回ります。
この、手抜き、囲碁の用語にもあります。相手の打った手に対して、適切に対応する手を打たないことを、手抜きすると言います。相手の打った手には、意味があります(囲碁にまつわる言葉A参照)。我が方の石を殺そうとしている。我が方の陣地を減らそうとしている。相手の陣地を増やそうとしている。普通だと、相手の意図を察知して、それを防ごうとする手を打ちます。これを「応手(おうしゅ)」と言います。しかし、場合によっては、応手をしないで、他の手を打つことがあります。このような場合のことを、囲碁では手抜きすると言います。
手抜きをすると、相手の術中にはまってしまうではないかと心配です。必ずしもそうではありません。手抜きは、高等戦術なのです。相手の手が、相手の意図を必ずしも実現できないと、相手の読み間違いを見抜いた。相手の目的が実現できたとしても、こちらにはそれに勝る利益を得る手がある。このような場合、積極的に手抜きをします。手抜きは、悪い結果を生むのではなく、よりよい結果を生むよい手段なのです。
力量が上がるほど、手抜きを有効活用できるようになります。力量がついていないうちは、「音の鳴る方に打つ」と言われるくらい、相手の打ったすぐそばに打ちがちです。力量が上がって手抜きすることができるようになると、相手の打ったところから離れたところへ打てるようになります。手抜きは、力量アップのバロメーターでもあります。