囲碁にまつわる言葉(P)
2022/1/24

太刀盛り(「たちもり)」
碁盤を製作するのに用いられるのは、木材です。桂(かつら)、公孫樹(いちょう)、檜(ひのき)、檜葉(ひば)、南洋材アガシス、北米産スプルースなどが利用されていますが、なんと言っても一番人気は榧(かや)です。石を置くときの弾力、音、木材の色艶など、他の追随を許さないそうです。
使われる木材は、樹齢数百年の大木です。碁盤のおおよその大きさに切って、10数年自然乾燥させます。それから碁盤に仕上げるそうです。それでも何年かすると、形に歪みが生じて、修正の作業が必要になるようです。
仕上げに碁石を置く升目を直線を直角に交差させるようにかくのですが、このとき、太刀盛りという独特な方法を用います。
日本刀の刃の部分に黒漆を塗り、それを碁盤に押しつけるようにして線を引くのです。切っ先から柄のほうに向けて順に一本の直線を引きます。まさに熟練の技というべきでしょう。今では、大量生産のために、簡便な方法で、定規を使ったり印刷したりするのが一般的ですが。
ところで、そんなに高価そうなものを使わないと囲碁は出来ないかというと、そうではありません。碁盤は合板でもよいし、プラスティックでも構いません。紙、布でもよいし、マグネットを使うなら鉄製です。碁石はプラスティック、ガラス、紙、何でもよいのです。安価に、気軽に楽しめるゲームです。江戸時代には、紙の碁盤を使っていたことが、川柳などで知ることができます。「山寺へ懐中したる紙碁盤」「自身番風に碁盤を吹き取られ」等。