囲碁にまつわる言葉(T)
2022/2/20
「碁敵(ごがたき)」
「碁敵は憎さも憎し懐かしき」という江戸時代の川柳がある。説明せずとも、心情や置かれた状況がありありと思い描けるのではないだろうか。落語の演目「笠碁(かさご)」のまくらにも使われる所以である。
川柳にも詠まれるくらい、囲碁は古くから庶民の暮らしに深く浸透していたことが分かる。「碁敵」だけで、補足説明なしで意味が通じるのもそうである。
「笠碁」の登場人物は、旧知の隠居仲間で碁敵である。ある日、これからは互いに「待った」をしないで、潔い勝負をしようと約束する。しかし、約束した1局目から「待った」をし、言い争いが始まり、仕舞いには喧嘩別れをしてしまう。でも、喧嘩はしたが、そこは旧知の間柄、相手のことが気になって仕方がない数日を過ごした。とうとう、ある雨の日笠をかぶって相手を訪れる。結局もとの鞘に収るのだが、人生悟りの境地に入る頃になっても、見苦しい振る舞いをさせる碁敵という存在。囲碁の魅力の裏返しでもある。