囲碁にまつわる言葉(q)
「AI囲碁」
人工知能を搭載したコンピュータを使ったゲーム機で楽しむ囲碁のことを指す。
「AI囲碁」の研究は、1962年、アメリカで始まった。最初のプログラムは、アマチュアの36級程度だったらしい。その後、各国で研究・開発が進み、1990年代までには、アマチュア上級者並の棋力に達した。
2000年代に入ると、ゲーム理論の研究が進んだ。コンピュータの性能向上と相まって、飛躍的に棋力が向上し、プロとコンピュータの棋戦が度々行われた。コンピュータ側の置き碁で、プロがやや優勢だった。そうなると、アマチュアの高段者にとっても、結構手強い相手となる。コロナ渦の今、相手と密にならずに済む碁敵として重宝されている囲碁愛好家が多いのではないだろうか。
2010年代後半になり、「アルファ碁」のソフトが開発されると、プロの高段者でも歯が立たないまでに棋力が向上した。2016年3月には、トッププロ棋士に4勝1敗とし、世界中を驚かせた。これは、人間の方略を覚え込むソフトではなく、与えられたルールに従って、コンピュータ自身が方略を探索するソフトである。
次に現れたのは、「アルファ碁ゼロ」というソフトである。最初に囲碁のルールだけを覚えさせる。すると、一回も他と対戦することなく、自ら対戦を積み重ねていって、3日程度で、先輩コンピュータに追いつき、追い越す能力を自ら身につける。トッププロ棋士に4勝したコンピュータが、「アルファ碁ゼロ」と対戦すると100連敗し、1勝もできないのである。もう「アルファ碁ゼロ」に勝てる人間はいなくなったのである。人間が何十年もかかって勉強し、身につけてきた棋力を、たった3日で、それも人間の手の届かないところまで。
最近では、プロ棋士が自分の勉強のために、コンピュータを利用する。また、コンピュータの考え出した新しい打ち方を積極的に取り入れる。今は、囲碁界もコンピュータとの共存時代にある。