囲碁にまつわる言葉(p)
2022/10/21
「クリックミス」
パソコンを使っていると、よくクリックのミスをする。文字の誤入力ぐらいで済めばいいが、大事(おおごと)になることも無いとは言えない。危ないサイトへ誘導された。金額を間違えて損をしそうになった。くれぐれも、クリックのミスをしないようにしたいものである。
囲碁の世界では、そんなことは無縁だろう。そう思われるかもしれないが、そうではない。ネット対局では、よくクリックミスをする。サーバーによっては、相手の同意を得れば、クリックミスを打ち直せるプログラミングをしているところもある。
コロナ禍のせいもあるが、プロの公式な囲碁の対局もオンラインで行われるようになった。国際的な棋戦ではなおさらである。オンラインの対局では、パソコンの画面上の碁盤の上に、石を置いていく。マウスポインターを打ちたい位置へ持って行き、クリックする。これで、画面上の碁盤の上に、石が現れる。クリックのやり直しは、「待った」と同じで、禁じられている。手で石を置くのと違って、マウスのクリックでは間違いが起こりやすい。
「2020三星火災杯」争奪戦でのことである。日中韓台の棋士32人が参加して行われた。その決勝戦は三番勝負で争われた。決勝に残ったのは、中国の柯九段と韓国の申九段だった。その第一局目、黒が申九段、白が柯九段で対局が始まった。その21手目のことである。申九段のクリックの後に画面に現れた黒石を見て、誰もが我が目を疑った。一目の得にもならない一手パスと言ってもよい所に黒石が打たれたのだった。明らかなクリックミスである。プロ同士の対戦では、このミスは致命的である。この後、120手まで打ち続けられたが、結局柯九段の勝利となった。