囲碁にまつわる言葉(お)
2023/11/14

推理小説「本因坊殺人事件」 内田康夫作
この推理小説を書くに当たっての条件を考えてみました。
まず、棋士の所属している組織、日本棋院の仕組みや役割について理解しておかなけれなりません。次にタイトルの一つである「本因坊」についての歴史やタイトル戦の運営の仕方を知っておく必要があります。この小説では、記録係という普通は注目されない役割の登場人物が、事件の重要な鍵を握ることになります。タイトル戦に携わる様々な立場。スポンサーの新聞社、運営者の棋院、対局の棋士、会場設営の宿泊施設、それらから恩恵を受ける者についての幅広い理解も必要です。
この小説では、モールス信号が、事件の謎を解く鍵となります。これも調べておく必要があります。
そして、何よりも囲碁というゲームについての造詣でしょう。手談とも呼ばれる相手との無言の遣り取り、局面の進行に伴う心情の変化。これらは、作者自身の体験の裏付けがなければ描写できるものではないでしょう。作者内田康夫氏は、相当な打ち手だったそうです。