囲碁にまつわる言葉(て)
2024/2/26
小説「名人碁所(ごどころ)」 江崎誠致作
江戸時代、棋院四家の内、本因坊家と安井家(「天地明察」参照)の碁所の地位をめぐる争いを題材とする小説。
碁所は、幕府直属の職位で棋院四家を統括する絶大な権限が与えられていた。その職位には囲碁の実力が最高位の者(名人)が就くこととなっていた。しかし、幕府の職位であるが故に、担当部署の寺社奉行やその他の意向で、恣意的な決め方がなされることもあった。
安井算知を碁所にという幕府の沙汰に納得のいかない本因坊道悦は、異議を申し立てた。負ければ「遠島」の罰を覚悟の上の争碁を願い出た。幕府からは、1年間に20局、全体で60局対戦するようにとの条件で許可が下りた。
この小説を読めば、棋院四家に属する棋士たちの暮らしぶりがよく分かる。スポンサーとなる武家や商家との関係。四家を維持するための跡継ぎの育成や人材の発掘。四家の競争や交流。対局の際の服装やしきたり。御城碁の運営の仕方。
そして、囲碁が広く庶民にまで親しまれる国民的ゲームになってきた理由が分かる。現在の退潮ぶりが口惜しい。
本因坊道策