囲碁にまつわる言葉(ゑ)
2024/5/20

「我が輩は猫である」(その1)
夏目漱石は「我が輩は猫である」の中で、囲碁に関する表現を残している。
猫の言葉
「我が輩は世間が狭いから碁盤と云うものは近来になって始めて拝見したのだが、考えれば考える程妙に出来て居る。広くもない四角な板を狭苦しく四角に仕切って、目が眩む程ごたごたと白黒の石をならべる。そうして勝ったとか、負けたとか、死んだとか、生きたとか、あぶら汗を流して騒いでいる。高が一尺四方位の面積だ。猫の前足で掻き散らしても滅茶々々になる・・・(途中省略)・・・
夫も最初の三四十目は、石の並べ方では別段目障りにもならないが、いざ天下分け目と云う間際に覗いて見ると、いやはや御気の毒な有様だ。白と黒が盤からこぼれ落ちる迄に押し合って、御互いにギュウギュウ云っている。・・・(途中省略)・・・
碁を発明したものは人間で、人間の嗜好が局面にあらわれるものとすれば、窮屈なる碁石の運命はせせこましい人間の性質を代表していると云っても差支ない。・・・
(以下省略)
囲碁のルールを知っている者も、詳しく知らない者も、無理なく理解できるし楽しめる文章である。さすがは文豪である。