7月読書会報告 ー佐藤春夫作の詩集からー憂愁の古心

連日炎天下の7月、読書会の27日も関内の石畳はやけどするような熱気に包まれていました。集まった11人の皆様、時間ぎりぎりまでの読書会とその後のランチ、楽しく過ごすことができ、感謝です。日射病にもかからず、何よりでした。読書会の報告を致します。
7月は、それぞれが発見した佐藤春夫作の詩歌の良さを話し合うのが目的でした。資料として、講師から殉情詩集初版本、春夫詩鈔サイン本、魔女初版本、車塵集美装本等5冊が示され、びっくりするほどの貴重本でした😊! 皆様からは1921(大正10)年に刊行された処女詩集「殉情詩集」からの詩歌が多かったようです。「少年の日」四章の朗読の晴朗なこと、15,6歳の作「馬車」は長く埋もれていた珍しい詩で、乙女への純な憧れと描写力に共感。但し「秋刀魚の歌」をあげた方々は複雑微妙でした。言葉の背景に潜む人間関係に、作者の誘導を感じたとのことで前年の小田原事件に波及。日常の中の非日常の屈折した思いが「あはれ 秋風よ 情(こころ)あらば 傳へてよ・・」と最も日本人的な孤愁になり有名になったとの意見でした。「感傷風景」は人妻との甘い逢瀬の思い出、「なみだ」は芭蕉の俳句取りの七五調の調べ、「或るとき人に與へて」「海邊の戀」の、こころ妻やこぼれ松葉等の一方的な想いは文語体でも現代人に通じる心情で分かる歌。鎌倉中央図書館の地下にしか置いてないのはもったいない等。「ためいき」「水邊月夜の歌」も音読で浮かび上がる日本古来の抒情歌で時々出る破調が激しさを表す詩。谷崎潤一郎の妻千代への恋慕を古典物語の「命がけの戀」と二重写しに表現。画家、小説家、詩人としてマルチの才能を発揮した作家との意見に共感が集まりました。郷里和歌山でのお召列車遅滞事件で自死した「清水 正次郎を悼む歌」を万葉風に長歌と反歌の傾向詩として紹介した人もいて、佐藤春夫の多面性を知らされました。
卒論に選んだ講師の「佐藤春夫愛」にも共感です。作者は、大正時代のロマンチシズムを骨太に率直に歌い上げ、憂愁の古(いにしえ)心を意図的に古言葉で読者に「聞き給へ」(殉情詩集自序文)と迫る詩人でした。囲碁のように「白黒はっきり」の作家だったような気がしませんか? 8月も和歌山特集の読書会 有吉佐和子作「紀の川」です。もっと涼しくなってほしいですね。
◊♠♣♥♦◊♠♣♥♦ 読書会広報部 ◊♠♣♥♦◊♠♣♥♦