8月読書会の報告ー「長良川」-奔流の中での昭和の人々ー
大型台風のニュースの中、8月読書会の報告です。酷暑の日差しにも相鉄線人身事故にも負けず、今月23日に12人の皆様で読書会を開催致しました。
題材は「長良川」-豊田 穣作ーです。岐阜文学旅行にちなむ本ですから、初めて読む方がほとんど、しかも絶版本です。長良川の黒い水の流れと重い人間の営みが主題との意見が主流でした。先祖、武田一族が関ケ原の合戦での落人となり、川衆として人々を統べて時代の流れを読み、材木商、薬品会社を興した経緯。家族物語か?と思わせて、挿入される激しい海洋戦、撃墜され自死未遂で捕虜となる過酷な様子、没落名家の大棚瀬家、濃尾平野を襲う大洪水、時系列無しの映画を観るような作品です。目玉を損傷しえぐり取られる凄まじさに胸苦しさを覚えた方、戦後の父子の日常に終戦後も終わらぬ辛さを感じた方、幼少期に満州から引き揚げ博多に着くまでの体験を語る方等、昭和時代の息遣いが聞こえてきそうな作品です。「なぜ、どうして」を繰り返し、「神」の存在への不信感に沈み込む「茂」や「恭子」は当時の人々の姿でした。「夜明け前」や「破戒」の主人公にも重なるとの意見も出ました。「恭子」が見合い相手の「茂」に語るソ連兵から受けた雪原での暴行・・なぜどうして生きているのか・・の記述は「恭子」の心情への寄り添いが無いとの指摘もありました。過去も現在も差別と殺戮は繰り返され一生を支配されます。「オッペンハイマー」の映画を例に挙げる方や不条理さを突く方もいました。それでも、墨俣城址で「茂」は「恭子」に話します。「働いてみたらどうですか。」「何かやってみたらどうですか。」ー川域に住む人々は台風の激流、洪水に巻き込まれ、戦争で多くの被害を受け、黒い濁流に呑み込まれそうになっても、こうして立ち上がってきたのでしょう。無念を嚙みしめながら。「ヒューマニズムが主題では。」と話された方に多くの頷きがありました。
9月24日出発の岐阜文学旅行は15人で行って来ます。墨俣一夜城址に立つのも楽しみの一つです。
◊♠♣♥♦◊♠♣♥♦ 読書会広報部 ◊♠♣♥♦◊♠♣♥♦
追伸 メールマガジン今月号には読書会横浜散歩のランチ写真が掲載中です。7人しか出ていませんが結構、幸せそうです。見て下さい。