8月読書会報告 「雁の寺」水上 勉作
8月25日(木)の読書会は、福井県出身の作家、水上 勉作「雁の寺」です。14人の方が集まりました。
2年振りでご出席の先輩から「お久しぶりです。読んでないけどいい?」の楽しいご挨拶でスタート。
但し、読書会で多く出たのは「哀しい」「怖い」「暗い」という言葉でした。
4尺そこらの身長で、奴隷のように扱われる13歳の少年僧「慈念」の哀しみの深さは幼年期からとの指摘。
師匠への殺意を唯一の夢として、完遂してしまう姿は、現在の若者たちが起こした事件を連想し、怖い。
若狭の底倉、西のはしの乞食谷という地名、阿弥陀堂に捨てられた「捨吉」慈念の救われない暗さ、
その厳しい辛さに同情した里子(和尚の妾)の過ちの深さ。
孤峯庵の襖絵から、母親雁をむしり取り逃げる少年の底知れない孤独。
戒律の厳しいはずの寺内部でのどろどろとした世界は椎の木のてっぺんの鳶の餌場そのまま。
暗い壺の底には半死の蛇、魚、鼠がうごめいている。
師匠の死体を隠した本堂の床下に、竹小刀で仕留めた池の鯉の骨が散らばっていたように。
美しい雁の襖絵との対比を常に感じさせる作者の文章力。ミステリーであり、心理小説でもある実体験の迫力。
慈念の無言や淡々とした態度の不気味さ。最後に向かいテンポの速くなる種明かしとその間に挟まる経文の恐怖。
「なぜ、師匠殺しを」という疑問は、全員が持ちました。
「磯田光一氏の解説はその一考になり、素晴らしい」との意見が妙に説得力満点だったことも報告します。
「雁の寺」は4部あるそうです。新潮文庫のは、その内の1部。作者自身が「モデルはある。書くことは周囲に迷惑
をかけると承知している」と述べているとか・・。(分かっていても書くんですか?それも怖い)
登場人物たちは全て秘密と嘘を抱えて「孤独」に生きています。お寺での存在を否定されている里子は半生きですが。
作者の水上勉という人もかなり深くて暗い部分を背負っていたのではないでしょうか◊。
最後、2年振りのご出席の先輩から一言「そんな、重たい小説より、これの方が面白いよ」ー世界を震撼させた日本人ー
がありました。そうかなあ・・。ランチの後は、有志で上大岡「ひまわりの郷」でフォトさくら展へ。
力作の数々を鑑賞し、楽しませて頂きました。ご盛況でした!。
来月は福井県に2泊の文学旅行、コロナ禍に気を付けて「行って参ります。」
25日に皆様と鑑賞「フォトさくら展」の様子
◊♠♣♥♦◊♠♣♥♦ 読書会広報部 ◊♠♣♥♦◊♠♣♥♦